認知症(相続コラム65)

不動産相続について

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本日お話しのテーマは認知症について。

相続コラムの中でも何度も出てきている認知症について、
もう少し別の角度からお話ししたいと思います。


まずは言葉の定義として、認知症をとらえてみます。
認知症とは「脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、
日常生活全般に支障が出てくる状態」
のことをいいます。


世界的にも長寿の国として知られる日本ですが、
平均寿命と健康寿命の間には10年ほどの開きがあると言われています。
誰しも年齢を重ねるごとに、あちこち問題が生じますが、
その中でも、脳に障害が生じて認知機能が低下する認知症というものが、
大きな社会問題としてメディアなどでも取り上げられています。

何が問題かというと、現在の日本では親子が何世代も同居しなくなっています。
高齢の親はいずれ独居となり、会話も減り、認知機能の衰えに気づかずに
ある程度進行するまで誰にも気づかれることがありません。

進行してしまうと、騙されて大きな財産を失ってしまうリスクがあります。

親子間で財産の管理・承継について話し合いがなされていればいいのですが、
ほとんどの場合、親の財産を子どもが代わりに管理するということが行われていないため、
相続という観点で見たときの一番の問題点は財産管理となります。
親の財産を知らなければ騙されて失っても気づくことが難しくなります。


認知症患者数は、2025年には700万人に上るという数字も出ています。
これは65歳以上の5人に1人というとんでもない数字です。
他人事だと思わずに、何らかの手段を講じることとをお勧めします。
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認知症の前段階に「軽度認知障害」と呼ばれるものがあります。
これは正常とも認知症ともいえない中間の状態のことをいうそうです。

ここで家族の誰かが気づき、本人もしっかりと自覚することが肝心です。
指摘する子ども世代は、慎重にタイミングと言葉を選ぶことが大切ですし、
指摘された親世代は拒絶せずに現実を受け止めないと親子間で争いになります。
このパターンは非常に多いと思います。

私も現実に体験しましたし、身内に現在進行形の親族がいます。
誰でも初めての体験ですから、専門家によく相談をして話を聞くことが大切です。
「地域包括支援センター」が各自治体に設置されていますので、
そこで状況を細かく話しながら、アドバイスをもらうことです。
相談員は経験が豊富ですから、本人が認めない場合、病院を受診しない場合、
役所への手続きや今後の流れについて詳しく親身に相談にのってくれます。

私も初めての体験でわからないことだらけで、離れたところに住んでいる義父のことに
とても苦労しましたが、支援センターの相談員の方から毎回アドバイスをいただき、
最善の方法を教えてもらいました。
親子であるからこそ、感情的になってしまったりすることが多々あります。
子ども世代は、「親は認知症という病気なのだ」と理解したうえで、
感情的にならないように注意して、根気強く接してください。
親世代は「子供に迷惑をかけたくない」と思うのであれば、
子どもの言うことを聞くことが大切なのではないでしょうか。

何度も何度もお話ししているように、
ある程度の年齢になったら大きな財産(普段使わないようなもの)は、
その処分権限も含めて子供に管理を委ねることが大切です。

万一認知症が進行してしまうと、その時点で委ねる判断ができなくなり
そこから先は何も手段を講じることができません。


そうなると、子どもが経済的な負担をしたり、後悔することになります。
ある程度の財産を委ね、想いを伝えるということを、
なにかのタイミングで行っていただきたいと思います。
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財産の管理・承継について家族全員が共有しておくことは、
親も子もその先の人生を暮らしていくうえでとても大切なことだと思います。


元気に長生きが一番いいのですが、この話し合いも忘れないでください。




この記事を書いた人

伊藤明灯戸

不動産業界に30年以上。
相続に関しての相談実績が豊富で、家族信託を得意としています。
財産の管理を行うステージ、財産の承継を行うステージに分けて問題点を抽出し
家族構成、資産構成に合わせご提案をしています。
宅建士、コンサルティングマスター、相続対策専門士、家族信託コーディネーター。
悩んでいることがありましたら、ぜひ聞かせてください。