共有に関するトラブル(相続コラム66)
桜の見ごろもこの週末が最後のお花見となるでしょうか。
本日は「共有」にすることで想定されるトラブルについてお話しします。
相続の場合、相続人が複数人いて遺言書がない場合は、
『法定相続分』で遺産分割を行うケースがほとんどではないでしょうか。
現金などはその場で簡単に分けられますが、不動産は共有名義で登記することになります。
共有者全員が合意に至り売却する場合には、最終的に売却代金をその持分比率で分けます。
このようなケースでは多少手続きの手間がかかりますが最終的には現金と同じです。
ただし、共有者の中には「思い出の詰まった家を売りたくない」とか
「自分がここに住みたい」などと意見がまとまらないことも少なくありません。
残しておいても維持管理費はかかりますので、その費用をだれが負担するのか、
売却するとなった場合に誰が主導権を持って動くのか、
さまざまな場面で意見をまとめて進めていく必要があります。
売却という「処分」に関しては全員の合意形成が必要不可欠になります。
ほんの少しの持ち分であっても、共有者の中に売却に反対する人がいれば
売却を進めることができません。
誰か一人が住むなど「使用」する場合はどうでしょうか。
この場合、恩恵を被るのは共有者の一人になりますので、
他の共有者は家賃を請求する権利が発生します。
それではいくらの家賃が妥当であるか?維持管理費の支払いはどうするのか?
さまざまな問題が発生します。
第三者に賃貸で貸す「収益」を行う場合はどうでしょうか。
さまざまな書類の手続きは誰が行うか、窓口になる不動産会社はどう決めるか、
適正な家賃は幾らくらいか、修繕はすべきか否かなどたくさんの問題が生じます。
子供の頃に仲の良かった兄弟姉妹であっても、
それぞれが家庭を持ち様々な価値観を持っています。
経済的な事情で早く売却して換金したい、
思い出の詰まった家をそのまま残したい、
人に貸して家賃収入を得たい、などと意見が分かれることも少なくありません。
意見がまとまらないとそのまま放置することになり、
何年も経過すると建物は傷みますので資産価値は下がっていきます。
保有している間は維持管理費等の支出も避けられないので、
このような状態は少しでも早く解消したいものです。
いろいろなトラブルを見てきた中で、一番大切なのは「共有にしない」ことです。
遺す親世代が「遺言書」を書いて不動産が共有状態にならないようにすることです。
親が決めたことであれば、子どもたちは全く均一な配分でなくても揉めないと思います。
「不動産は○○が相続すること」と遺言書に書いておくことが賢明です。
最近は、夫婦で収入合算して住宅ローンを組んで共有にするケースも増えています。
相続でなくても不動産を共有することは少なくありません。
この場合の問題点は、何かしらの理由で離婚することになった場合です。
買って間もない新築住宅などの場合には、売却してもローンの残債に届かないケースが多く
とても難しい状況に置かれてしまうことになります。
住宅購入の選択肢ではありますが、よく検討することをお勧めします。
稀にあるのが、友達同士で別荘を購入するケースです。
何か共通の趣味を通じて仲良くなった友達同士が複数人で少しづつお金を出し合い
1件の別荘を購入するケースなどでは、トラブルが多いようです。
使いたい日がお互いに重なってしまって誰かが我慢したり、
別荘の管理費は意外に高額なので使えない人は支払いたくなくなってしまったり、
日常に使わないので設備の故障もよく起こりますが、
使い方が悪いからだと共有者間でもめごとが絶えません。
また、別荘などは購入したときより高く売れるケースはほとんどありません。
解消しようと思って売却したらほとんど手元に残らないことも想定する必要があります。
このように、兄弟姉妹や夫婦であっても共有は避けるべきだと思います。
いざ合意形成ができなくなると、何もできなくなってしまうのです。
相続した財産の中に不動産があるような場合には、
共有名義で登記する前に、ある程度の話し合いを行うことが肝心です。
均等に法定相続分で登記しなければならないわけではありません。
遺産分割協議の中で、相続人の間で決めることができます。
相続した後のことも考えて、遺産分割協議をすることが望ましいのです。
できるだけ共有登記を避けるような遺産分割を検討してみてください。
この記事を書いた人
伊藤明灯戸
不動産業界に30年以上。相続に関しての相談実績が豊富で、家族信託を得意としています。
財産の管理を行うステージ、財産の承継を行うステージに分けて問題点を抽出し
家族構成、資産構成に合わせご提案をしています。
宅建士、コンサルティングマスター、相続対策専門士、家族信託コーディネーター。
悩んでいることがありましたら、ぜひ聞かせてください。