老後の資金(相続コラム67)
本日は、「老後の資金」についてお話しします。
夫婦で暮らしている時には2人分の年金が生活の原資となります。
どちらかが亡くなり一人になると、年金は1人分となり、生活の原資は大きく減少していきます。
当然、必要になる生活資金も2人の時よりも減少しますが、
「考えていたのとは違う」となることがけっこうあります。
よく相談にあるケースをご紹介します。
相続財産が、住んでいた自宅と預貯金であるケースが多いのですが、
ご主人が亡くなり、住んでいた自宅は奥さんが相続し、
預貯金を子どもが相続したいと言い出し、預貯金の大半を子どもに渡すケースです。
私の個人的な考えとしては、すべてを配偶者である奥さんが相続し、
その死後に子どもたちが相続する形が良いように考えています。
年齢を重ねるにしたがって、心配事が増えていきます。
手元にお金があれば解決出来たり、安心出来たりすることが意外と多いのではないかと思います。
財産総額から見たときの不動産の比率は大きくなるケースが多いので、
法定相続分で遺産分割を行うとすると、配偶者である奥さんは預貯金の割合が小さくなってしまいます。
不動産の中でも自宅は収益を生み出す性質を持たないので、
相続財産全体を法定相続分で分割するというのは必ずしも正解ではないように思います。
子ども世代も子育てにお金が掛かるような事情もあると思いますが、
年老いて残り少ない人生を不安と共に暮らさなければならい可能性があるなら、
基本的に奥さんである配偶者が預貯金も含めてある程度相続するように、
法定相続分にこだわらずに、状況に応じて遺産分割してもらえるようにアドバイスをします。
同居していればいろいろ細かなことにも気づくことができると思いますが、
離れて暮らしているとそうもいきません。
日常の生活の中にある小さな不安を少しでも多く解消できるように、
ある程度手元に資金を残してあげられたらいいのではないかと思います。
老後2,000万円問題などと取り上げられたこともありましたが、
金額の多寡よりも、どうすれば毎日を安心して暮らしていけるか、
こちらの方を優先して考える必要があるのではないでしょうか。
本人が独居ができなくなったら施設に入る場合にもお金は必要ですし、
そのタイミングで自宅を売却して現金化するという発想や諸手続きをするのは、
そう簡単なことではないと思います。
判断能力も次第に衰えるし、情報も少ない中で様々な決断をしていくのは容易ではありません。
長年連れ添った配偶者を亡くし、独居が始まったタイミングでその先の生活もいろいろ想定して決めておくと、
家族全員がいざという時に慌てることなく正しい判断をすることができるのではないかと思います。
年金で暮らすということは、自分で稼ぐことができないということで心細さが先立ちます。
いろいろな事態を想定して、幾らくらいの預貯金があれば安心できるのか、
さまざまなケースに対応できるよう想像力を働かせて話し合いをしてみてください。
必要以上の財産管理は子どもがするべきという部分は変わりませんが、
年老いた親の老後の資金について考え、話し合うことが、親の安心につながります。
また、状況は変化していきますので、定期的に見直す必要についても検討してください。
この記事を書いた人
伊藤明灯戸
不動産業界に30年以上。相続に関しての相談実績が豊富で、家族信託を得意としています。
財産の管理を行うステージ、財産の承継を行うステージに分けて問題点を抽出し
家族構成、資産構成に合わせご提案をしています。
宅建士、コンサルティングマスター、相続対策専門士、家族信託コーディネーター。
悩んでいることがありましたら、ぜひ聞かせてください。